うさぎのあなへの思い
「こどもが病気の時、働く母親は?」 子育て待合室 2001年6月 抜粋
子育ては、言うまでもなく本当に大変な大事業です。
まして、働くお母さんたちにとっては、かなりの困難が伴うことでしょう。
自分自身の仕事を責任を持ってやり通すことと、こどもに時間と手間ともちろん愛情をかけて育てていくこととが、必ずしもバランスよく両立するわけではないのですから。
とくにふだんは元気で保育所に通っているこどもが病気になった時は、保育所に預けるわけにはいきません。
こういう場合、元気な時より多くのケアを必要とする、病気のこどもの世話は、いった誰がするのでしょうか?
こどもが病気の時くらい、母親が面倒を見るのは当然だ、とする意見が大半でしょう。
こどもたちにしてみても、いつも、ママ、お母さん、と甘えたり頼りにしたりして密着度が高いのですから、病気になって不安な時には、誰よりもお母さんにそばにいてほしいと思うことでしょう。
それは、当の母親自身がよくわかっていることです。
問題なのは、こどもの病気は、ある日突然、何の予告もなくやってくることです。
あらかじめ決まっている母親の仕事の予定とは、かみ合いません。
このことは、父親におきかえて考えてみると非常によく理解できるのです。
こどもの急な病気で、即座に仕事を休めるお父さんが、いったいどれくらいいるでしょうか?
いつ、いかなる時でも、100%誰かに代わってもらえる仕事などないと思います。
有給休暇の問題だけではありません。ほかの人に迷惑がかかってしまう、とか、減給になってしまう、とか、そういうレベルの問題ではないのです。
自分にしかできない仕事、他の誰かでは間に合わない仕事、自分自身がまさにその時間にそこに出かけていかなければ解決されない仕事というものがあります。
職業人としての責任とプライドが、母親を仕事に向かわせます。
ところが、運悪くそんな時に限って、こどもは病気になってしまうのです。
そしてさらにそんな時、病気のこどもの世話をすることを当然のように、一方的に求められてしまう母親のつらい立場に、長いこと働く母親をやってきたひとりの人間として、深く同情してしまいます。
最近では、かなり意識改革が進んできたとはいえ、父親ももっと、母親と同じくらいに病気のこどもの世話を求められてもいいような気がします。
母親の代わりはいないけれど、仕事を代わってもらえない母親の、あるいは父親の手助けとして、病気のこどもの世話をしてくれるシステムがあってもいいと思います。
病児保育。昔、二人の息子たちを育てていたころ、ほかの誰よりも私自身が、あってほしいと切望していたシステムです。
この夏、クリニック併設施設として、一部、千葉市の委託事業の形態をとりながら、病児保育室をオープンする予定です。
病児保育に対する皆様のあたたかいご理解をお願い申し上げます。